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老舗 飴屋河合 美味しい和菓子の秘密を探る

瀬戸川のたもと。古くから地元に愛される飴屋河合製菓本舗。私もファンの一人です。
店に並ぶおいしい和菓子の秘密を代表の河合聡一郎さんに伺います。

代表の河合さん

 

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地元に愛される老舗

長い歴史を持つ飴屋河合。
徳川綱吉の時代。
烏帽子(えぼし)を被る太夫と才蔵が、めでたい文句で家々の幸福を祈って舞う「三河万歳」。当時この地を訪れていた一座の名簿に飴屋河合の名がありました。
飴屋の“飴”という言葉は、「あめえなぁー」という言葉に通じます。
「甘い菓子を扱う」ということで昔から「飴屋」と名乗っていたとのこと。

焼津は和菓子の激戦区。

25店舗が菓子組合に所属しますが、店が多くても、それぞれが顧客を持って棲み分けができている。
「焼津には季節や行事を大切にしている人が多いから、和菓子もまた必要としてくれる。」と河合さん。
節目、節目に、幅広い層の人たちが飴屋河合に和菓子を求めに来ます。
地域の祭りにも河合さんのお供物が配られます。

中には小銭を握りしめた小さな子も。
地元の保育園で毎月行われるお茶会では、河合さんの上生菓子が使われます。
「和菓子を“美味しい”と感じた子たちが、店にも買いに来てくれる。」

おじい様もお父様も菓子職人。

おじい様は、お手製のオーブンでどら焼きやカステラを焼いたり、さつま芋で水あめを作ったりとアイデアマン。
水あめは、数多くある焼津の佃煮屋にも甘味料として重宝されました。

「手間暇を考えたらこんなものを作るなんて考えられない。」と笑う河合さん。

お父様は型を使ってお菓子を作っていたそうです。
今は役目を終えた型が店に並びます。
菊、相撲の軍配、千鳥。季節、季節の美しい型。
上生菓子や落雁。色とりどりのお菓子が並んでいる様子が目に浮かびます。

お菓子の型はまだまだたくさんある

お菓子の型はまだまだたくさんある

 

地元に根差し地元にこだわる味を守る

地元にこだわるお二人のお菓子が今も店に並びます。
おじい様の菓子は「だるま最中」。

2色のだるま最中 かわいいフォルム

 

町を見守るように立つ虚空蔵山の裾に恵目山 弘徳院(けいもくざん こうとくいん)があります。ここに祀られる「虚空蔵菩薩」は、聖徳太子作といわれる秘仏。

弘徳院 秘仏の「虚空蔵菩薩」が祀られる

 

例年2月23日、「虚空蔵菩薩」の祭りに合わせて行われ、多くの人でにぎわうのが「だるま市」。
この市で売られるだるまを模して作られた最中は、あっさりとして、ペロッと食べてしまえる味です。

漁を生業としていた家が多かった浜当目。「だるま最中」は、家内安全や豊漁を願って市を訪れる方たちに喜ばれたことでしょう。

お父様の菓子は「石花海(せのうみ)」という名のサブレ。

石花海のパッケージのデザインは河合さん作

石花海のパッケージのデザインは河合さん作

「石花海」とは、駿河湾湾口中央よりやや西寄りにある浅瀬のこと。湾内の重要な漁場で、ここで獲れたサバなどが焼津の港に水揚げされます。

「漁師くらいしか知らない言葉だ」と、河合さん。

石花海の形を模したサブレはおしゃれなお味。ごくごく低糖の生地に、ふんわりとしたラム酒の香の砂糖衣をまとわせています。

お話を聞いて、「昔からの味を守っていくというのは大変なんじゃないかな」と思いました。

作業風景

大切なのは2つ。時代に合った味を作ること。また昔ながらの味を守ることだと河合さんは言います。

修行を終えて帰ってきた河合さんは、甘すぎる最中の餡が低糖質が好まれる時代に合わないと感じたそうです。

「当時店を廻していた父と叔父は、“味を見直した方がいい”という自分の言葉を煙たがりました。」

おじい様が書いただるま最中の紹介文の中には、
「たゆまぬ研究と栄養と風味をもって皆様の福(しあわせ)と威(いきおい)、そして智(ちえ)を願って作っております。」とあります。

大切な味を守ってきたお父様や叔父様にとって、河合さんの言葉は受け入れがたいものだったのかもしれない。

店に新しい風を入れていくのは大変なことなんだなあと感じました。

河合さんは根気よく父と叔父を説得し、少しずつ味を改良していきました。

最中の餡はとても難しい。

軟らかい餡では皮が湿気る。必要以上の甘みは菓子の味をくどくする。また糖化を起こしてジャリジャリになり、皮とのバランスを崩す。色々種類がある小豆もどれを使うか。
豆をブレンドしたり、砂糖を減らして水あめを増やしたり。

30代になり「この味だ」というものに辿りついてからは、忠実にその味を守り続けています。

「昔から変わらない」と思っていたその味は、職人の地道な努力があればこそ保たれているんだということを知りました。

自分ながらの和菓子を求めて

地元にこだわった商品が飴屋河合の魅力ですが、「父のその強いこだわりが嫌だった」と言います。

自身が開発した商品にブッセがあります。
そのブッセに付けられた名前が「当目山」。
「パッケージも地味で…」
今は名前を「たかくさ散歩」に、パッケージも華やかなものに変更されています。

3つの味のブッセ たかくさ散歩

ブッセは、修行先から帰ったら真っ先に作ってみたいと思っていたもの。
パッケージの裏には、母校の校歌の一節があります。

高草山の麓原 益津の里は山の幸 野の幸多きうまし里

母校の校歌

「僕はこの歌詞が好きでねえ」と河合さん。
海と山に囲まれた浜当目。農作物も豊富な豊かな土地。
「地元の食材にこだわった菓子を作ってみたい」
そんな思いがこもったブッセはむっちりとした食感。軽やかなクリームは苺・梅・杏味。

話を聞いていて「河合さんも、おじい様やお父様に劣らず地元愛が強いんだなあ」と可笑しくなりました。

祭りのお供物の注文を受けるとき特に、「ああ、この店は地元に必要とされている」と感じるとのこと。

お供物は、神様の恩恵を家族みんなで賜る大切なもの。先代から変わらず「飴屋河合で」と言われるのは、菓子職人として大きな誉れなのではないかと感じました。

「お客様に必要とされる限り店を守っていきたい」と河合さん。
いつまでも地域に愛されて続けて欲しい、いいお店だなあと感じました。

瀬戸川のたもと 飴屋河合店舗

 

まちかどリポーター

まちかどリポーター:かめ

かめ

焼津生まれ・焼津育ちの野菜ソムリエ。地元の野菜を調べる内、"生きた文化遺産"と呼ばれる「在来作物」と出会い、保存活動を続けている。活動の中で知った焼津の魅力を紹介しようとまちリポに参加。

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ページ更新日:2024年11月21日