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大人の自由研究 大井神社のお供物を追う

秋晴れの10月19日。
焼津駅北にある大井神社の、一年で一番華やぐ秋祭りです。

宵宮から華やぐ神社


今回私は、大井神社秋季大祭の「お供物」について調べてみようと思いました。
大井神社は我が家の氏神様なのですが、正直生活の中で関わることがありませんでした。
しかし今年は、お祭りの準備実行委員会である『年行事(ねんぎょうじ)』の末端に加わることになった関係で、神社の歴史やお祭りの仕組みについて知ることができました。そのお話が面白くて!
その中でも特に面白かったのが、お供物である「饅頭」についてのお話でした。
そこで今回は、「お供物」とはどういう物で、誰が作り、どんな風にお祭りで使われ、最終的にどんな形で私たちのところまで回ってくるのかというところまでをリポートしてみることにしました。
大人の自由研究みたい!楽しみです。

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お供えとはどんなもの?

大井神社の創立は永禄3(1560)年。長い歴史を持つ神社です。
戦国時代の末期。虐げられた貧困の祖先たちが、五穀豊穣や平和な営みを神にすがるために建てた小さな祠(ほこら)か、お堂がはじまりではないかという文書が神社に残っています。
「大井神社の神様は二柱(ふたばしら)。道の守り神である猿田彦命(さるたひこのみこと)と、水を司る弥都波能売命(みずはのめのみこと)。

「神社の近くには瀬戸川が流れているし、きっと水害にも苦しんだんでしょう。」
そう話してくれたのは、大井神社の神主を兼ねる那閉神社の松下正之さん。
へー神様の数え方は柱(はしら)なんですね。
 

那閉神社松下正之さん


お祭りにおいてのお供物の役割についてお話しを伺いました。
「お供物としてお祭りに奉納するのは地元の産物が基本です。大井神社の近くなら、魚や、米や野菜、果物。特にお米は地域にとって、人々の命をつなぐ一番大切なもの。それらを奉納し、今年一年を無事過ごすことができたことを神様に感謝し、また来年もよろしくお願いしますという願いを込めます。」
 

用意された様々なお供物


大井神社では、神社のお世話をする「氏子総代」の方々がお供物をそろえます。
実際に今年お供えされたものを見せていただきました。
スルメや昆布に鯛。野菜に果物。さすが港町、鯛は地元の港に揚がった物だとか。
 

新鮮な地元産の鯛


そして、大切な御洗米と御神酒、鏡餅などが用意されます。
 

御洗米と御神酒


儀式が始まると、お供物は、お舞を奉納する巫女さん役の子どもたちの手で神様の元に運ばれ、終わると、子どもたちによって下げられ、直会(なおらい)の場へと運ばれます。
 

お供物を運ぶ巫女たち


直会は、お祭りの後、神前に供えたお供物を神職や参列者で分け合っていただく会食儀礼。
神様に捧げた神聖なお供物をみんなでいただくことで、神様にもう一度感謝をし、そのお力を分けていただくという大切な儀式の一つです。

和菓子工房吉野の作るお供え紅白饅頭

そういえば、いつも祭りの後に各家に配られるお供物はどこにあるのでしょう。
皆に配られるお供物は紅白饅頭です。お祭りの中では、お饅頭が入った箱がいくつも神前に供えられ、その後、氏子の各家庭に配られます。
 

お饅頭が入った箱がいくつも並ぶ


このお供物をいただくことで、直会に出席することのできなかった人たちにも神様の力をお裾分けしていただくのです。
作っているのは、焼津駅前通りの「和菓子工房吉野」。上生菓子が有名なお店で、地元のお茶の先生たちからの信頼も厚いお店です。
 

和菓子工房「吉野」

松永洋子先生


​​茶道表千家地方教授の松永洋子先生は、​​​「吉野さんのお菓子が出てくると、茶会のお客様が『わぁ!』と思わず声を上げます。
お茶菓子は、そのお茶席のテーマを伝えてくれる大切なもの。吉野さんは、いくつもの見本を作り、「甘すぎる」「色が気に入らない」といった茶人の我儘に付き合ってくれる。
だからこそ、吉野さんのお菓子は、味ばかりではなく見た目も、皆が『わぁ!』と沸くほど綺麗なのではないでしょうか。」そんな風に言います。
 

吉野さんが作る美しい上生菓子「姫菊」

 

店主の山川仁志さんに饅頭の起源について伺ってみます。

 

店主の山川さん


饅頭の起源は中国。諸葛孔明の時代に遡ります。
洪水に悩まされていた中国では、神の怒りを静めるために人身御供を捧げていましたが、ある時期から、代わりに饅頭が捧げられるようになります。人の頭を模した、動物の肉がいっぱい詰まった肉まんです。
水害を避けるために建てられた大井神社のお供物としてはぴったりの起源だと思いました。
海を渡って日本にやってきた饅頭ですが、殺生を禁じた仏教の儀式で使われるようになり、中身が甘いあんへと変化していきます。その後、千利休にお茶菓子として愛されたことによって、更に広く知られていきました。
お陰で私たちはおいしいお饅頭が食べられる訳です。

山川さんがお菓子を作る際に心がけてているのは、「材料にこだわる」こと。
「あんこは和菓子の命。製餡所の生あんで作ったのでは、肝心の豆の出所が分からない。風味や味を研究していった結果、十勝の小豆にたどり着きました。あんこはこの豆から手作りしています。」
ちょうど煮上がったばかりだというあんこはツヤツヤです!
 

ツヤツヤのあんこは一から手作り


お祭りに関わることについて、どんな風に考えていますか?と聞くと、山川さんは、「普段お世話になっている方たちに感謝を込めて作る。おいしく食べていただけるのか、お供物を作るときにはいつも責任を感じます。」とおっしゃいました。

お祭りでは、抱えるほどの大きな鏡餅に加え、大量の饅頭を作りました。紅白対で733組。予備を含めなんと1600個!おいしく食べていただくため、なるべく直前にできあがるよう時間に気を配ります。
包むのは家族総出の大仕事。神前の箱の中には、その努力の結晶が詰まっているわけです。

氏子全世帯へ配られる紅白饅頭

お祭りの後。疲れているところを年行事の方たちがひとがんばり。なるべくおいしい内に食べていただけるよう、神社総代から組長に、そして氏子の各お宅へと733組のお饅頭が配られていきます。
 

733世帯に紅白饅頭が配られる


とてもスムーズなその仕組みができるまでには、何度も失敗があったのだとか。
お供物に関わる年行事と氏子総代の両代表者にも感想を伺いました。
 

増田直巳さん

年行事代表 増田直巳さん

私も神社のお祭りに関わったのは久しぶり。こんなにも丁寧にお祭りが行われているとは思いませんでした
分からないことだらけでしたが、本当にいろいろ学ばせていただきました。
年行事は毎年持ち回りで替わっていきます。来年の年行事の方々が分からないことがあれば、私が手を差し伸べる。それが「祭りを継承する」ということだと思います。
 

内藤敦司さん

大井神社氏子総代代表 内藤敦司さん

年行事と氏子総代だけでなく、地元を盛り上げる常磐会と3つの団体が協力して行うお祭り。
うまくいかないこともありますが、どう反省してもアクシデントは起こるものです。
それをどうクリアしていくかで、まちの「結束力」が深まるかどうかが決まるのだと感じています。
いつ震災が起こるか分からない焼津で、この「結束力」は力になる。
たかがお祭りと考えがちだが、とても大切なことだと思います。

神様へのお供物であるこのお饅頭はたくさんの手を経て、私のところに届いたんだなあと思うと、ありがたみも違ってきます。
お饅頭にお茶を添えながら、「平和だなあ」とつくづく思いました。
これも大井神社の神様と、お祭りを滞りなく行ってくれたみなさんのお陰。
赤白一個ずつ箱に詰まったかわいいお饅頭は、フワフワの皮の中にすっきりとした甘みの上品なあんが入っていました。
 

ふわふわの紅白饅頭

和菓子工房 吉野

まちかどリポーター

まちかどリポーター:かめ

かめ

焼津生まれ・焼津育ちの野菜ソムリエ。地元の野菜を調べる内、"生きた文化遺産"と呼ばれる「在来作物」と出会い、保存活動を続けている。活動の中で知った焼津の魅力を紹介しようとまちリポに参加。

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ページ更新日:2026年1月5日