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贈りたくなる「志太梨」を守り育てる人たち

県外の人に贈りたくなる焼津の名産品というと、何が思い浮かびますか?

私がおすすめしたいのは「志太梨(しだなし)」です。

シャクッと噛んだ瞬間にみずみずしさが広がり、爽やかな甘味がちょうどよく、梨を切ってからお皿に盛るまでの間につまみ食いの手が止まらなくなってしまうことも。志太梨を知らないという人にはつい食べさせたくなり、そして食べた人はみんな「こんな梨は食べたことがない!」と喜んでくれるので、私は心の中でガッツポーズをするのです!

そんな志太梨についてもっと知りたくなり、梨農家さんを訪ねました。

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受け継がれてきた志太梨

小島梨園さんの畑

 

まず訪ねたのは、私が幼い頃から交流のある梨農家の小島梨園さん(焼津市上新田)。

「この辺りには梨農家さんが多いですよね」と切り出すと、志太地域で梨の生産が始まったのは約150年前で、その頃には志太地域全体で1500軒ほど生産者がいたが、今では全体で85軒ほどに減っていると教えてくれました。「それでも、この辺りはやっぱり水はけのよい土壌で日当たりもいいから、生産者さんも多い。高齢化が進んでいるけれど、近くの生産者さんと講習会や情報交換もしていて、刺激になるよ」と楽しそうな目。

続いて、梨は一年を通して仕事があることを教えてくれました。

「冬の枝の剪定には力がいるし、春に花が咲き始めれば、受粉、摘果(てきか)に始まり、実を綺麗に保つための袋がけ、収穫、出荷作業と、秋まで次から次へと仕事があってね。その上、悪天候による被害を受ける年もある。だから大きくなった実を箱詰めした時、綺麗に並んでいる姿を見たり、食べた人に美味しかったと言われたりした時は喜びも大きい。手のかかる子ほど可愛いっていうでしょ」といい笑顔。

美味しい梨が実るまでの地道な作業と梨への愛情がじんわりと伝わってきました。

小島梨園さんの梨をはじめ、志太梨は生産者の方が直接販売しているケースが多く、毎年時期になると大勢のお得意様が遠方の知人へ贈答用として配送を頼みに来たり、各地のお客様から注文が入ったりするそうです。毎年待っている方がいて、「すごく美味しかった〜」など直接お客様の声も聞けることが、大きなやりがいやプライドを持って生産するかっこいい姿に繋がっていることを感じました。

やりがいのある梨生産ですが、実は高齢になるにつれ、生産を続けるのが難しい生産者の方も少なくないそうです。そんな中、小島さんが「最近、若い人が継いだ畑があるんだよ!とても一生懸命やっていて、素直で前向きで、なんだか応援したくなっちゃうんだよね〜」と、とても嬉しそうに話してくれるのです。その方にぜひ会ってみたいと思い、その“若い人”を尋ねました。

志太梨を受け継ぐひと。大好きな梨に導かれるように焼津へ。

小島さんが連れて行ってくれたのは、焼津市上泉にある東名高速道路横に広がる梨畑。

爽やかな笑顔で出迎えてくれたのが 浅田 侑也(あさだ ゆうや)さんでした。

浅田侑也さん

浅田さんは、島田市金谷の出身。畑を継ぐことを前提に2020年4月からこの畑で研修を始め、2022年1月から自身が事業主となって、浅田梨園をスタート。

なぜ若くして梨農家という道を選んだのか気になり、その経緯を伺いました。

「中学生の頃、テレビ番組で「DASH村」を見て、作物を“作る側”に憧れたのが始まりで、大学も農学部にしました。大学を探すときに、作物をどうしようかなと考え、梨に決めました。野菜よりは果樹をやりたい思いがあって。それから、もともと梨が大好きだったんですよ!それがスタートでしたね(笑顔)」

「え!その段階でもう梨に決めていたんですか!?」とつい声を出して驚いてしまいましたが、その後のお話を伺うと、さらにびっくり。

大学で梨を研究し、卒業後は(梨とは無関係の)会社に就職しつつも、将来を見据えて1年目から市役所などに出向き、梨農家への就農相談などをしていたという浅田さん。最初から「梨をやりたい」ことを明確に伝えて色んな人に相談するうちに、この畑の所有者の方が畑を継いでくれる人を探していることを知り、この畑に出会ったそうです。

果樹栽培は、新規就農者が一からスタートするにはハードルが高いと言われています。木が成熟し、販売できる果実が実るまでに何年も時間がかかるからです。

一方、高齢の生産者にとって栽培と販売を続けることは体力的に難しくなり、しかし栽培をやめて畑を更地にするのも大変費用がかかるというジレンマもあるそうです。

こうした状況の中、浅田さんのように梨が大好きで生産をしたいという方と畑の所有者の方がマッチングしたのは、幸運のように思えますが、ここまでの浅田さんの真っ直ぐなお話を聞くと必然のようでもあります。

毎日が楽しくなった

念願叶って梨農家となった浅田さんに、梨畑で毎日働くようになり、大変なこともあるのではないかと聞いてみると……

「それが、ずっと楽しいんです!以前は正直、今日は仕事に行きたくないなと思う日もあったんですけど、梨畑で働くようになってからは毎朝起きて、“今日も働きたい!”という感じなんですよ〜」と、なんとも爽やかなご返答!

「梨の仕事はどれも楽しいけれど、1年かけて育てた梨を販売する時は本当に一番嬉しいです。ここは主に直売で、昔からのお客さんもいてくださって、時期になるとたくさんのお客さんがいらっしゃいます。そういう方と直接会ってやりとりをしながら、1年間かけてきたもの(梨)を手渡しできるというところに一番の楽しさと将来性を感じているところです」とのこと。

浅田さんのお話を聞くにつれて、小島さんが「応援したくなっちゃう」と仰っていたのがよくわかりました。

剪定作業中

(梨の話をしている浅田さんは本当に楽しそう!)

梨と写真 二足のわらじという働き方

そんな浅田さんの名刺を拝見すると、気になる文字が。

「農業×フォトグラファー」

思わず「フォトグラファーもされているんですか?」と尋ねると、「そうなんです。元々写真が好きで結婚式場の専属のブライダルカメラマンもやっています」とのこと。聞けば老舗の式場でさらにびっくり!

大学生の頃からの趣味として続けていた写真。会社員をしていた頃に、趣味でポートレート撮影会に参加して経験を重ねつつ、将来的には農業をしながら自分の好きな写真を使った新しい事業ができたら面白いと考えるようになったそうです。転機になったのは、友人の結婚式を立て続けに撮影したこと。幸せをかたちにできるブライダルフォトに魅力を感じ、これを仕事にして写真の世界でも経験を積みたいと思うようになったそうです。

そして意外なことに、この写真を仕事にしようと決断したことが梨農家になることも後押ししたそう。

「いつか梨農家になろう」というふわっとした思いが、「会社を辞めるならこのタイミングだ」と自分で自分の背中を押すように、梨の畑探しも本格的に動き始めることができたと話してくれました。ブライダルのハイシーズンはちょうど梨の作業が少ない時期で、良いバランスとのこと。

そうした現実的なところも、大事ですよね。

自分にピッタリの二足のわらじを見つけた浅田さん。この先、農業と写真でどんなことが起きるのかワクワクします!

夏から初秋の贈り物に志太梨を

浅田梨園では現在5種類の梨を販売しています。「品種によって収穫の時期が少しずつずれるようになっているので、7月下旬から9月中旬まで継続的に販売しています!」とのこと。品種ごと味わいも違うそうなので、期間中に何度も足を運んでみたくなりました。浅田さんに特徴を尋ねながら購入するのも楽しそうですね。

暑くなってきたら、大切な人への贈り物や自分自身へのご褒美に、ぜひこだわりの志太梨を味わってみてはかがでしょうか。

志太平野の恵み・志太梨
(おひさまの光をたくさん浴びた志太梨をぜひ!)

 

浅田梨園

まちかどリポーター

michino

焼津市出身・在住。学生時代から地域のレジリエンス(回復力、折れない力)を育てる活動をする「静岡2.0」を運営し、2014年から市内で誰でも参加できる対話の場を開いてきた。人に出会い知るたびに焼津を好きになってきた体験をもとに、焼津の人たちの営みをもっと知り、魅力を伝えたいと思い、まちリポに参加。現在は焼津市市民活動交流センター「くるさ〜」の相談員を務める。1児の子育て中。

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ページ更新日:2022年3月25日