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焼津の伝統野菜「三右衛門芋」を奉納する「芋祭り」を皆で体験し、次世代につなげよう

焼津市の伝統野菜、「三右衛門芋(さんうえもんいも)」を知っていますか?
焼津市三右衛門新田八幡宮(さんうえもんしんでんはちまんぐう)では、一説に江戸時代からこの地で作られているとされる三右衛門芋(里芋)を土地の神に奉納する「芋祭り」が今も開催されているそうです。今回、三右衛門芋を実際に煮て芋祭りを疑似体験するイベントがあると聞いて、参加してきました!

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今の技を活用して芋煮作り

会場の三右衛門新田地区公会堂に着くと、参加者の皆さんが調理の準備をしていました。

里芋の皮をむく担当と板こんにゃくを切る担当に分かれて調理スタートです。

 

郷土料理研究家であり野菜ソムリエプロの清水玲子さんが「里芋は鬼皮をむき、薄皮は付けたままにしましょう。包丁の他に『けそんべら』を使う方法もありますよ」と説明してくれます。「けそんべら」は、昔この辺りで里芋の皮をこそげるために使われていた竹べらのこと。「『けそん』とは皮をそぐ作業を“けそぐ”と言うことに由来するのではないか」と清水さんは話していました。「ペットボトルのキャップでもやれるよ」と教えてくださる方もいて、和気あいあいと作業が進みます。

 

私も包丁で皮むきに挑戦しました。表面が硬くて力の入れ具合が難しい!里芋1個の皮をこそげるのにも時間がかかりました。

調理前の三右衛門芋

真剣な表情で皮むきに挑む参加者の皆さん

皆さん真剣な表情。皮をむくのが早い方は「皮むきチャンピオン」と呼ばれていました!

 

次は里芋を一つの鍋、こんにゃくと黒はんぺんをもう一つの鍋に入れて煮ていきます。別々に煮るのは里芋の方が煮えるのが早いからです。

 

「味付けは酒、みりん、醤油の順番。先に甘みを付けましょう」「キッチンペーパーを落としぶたにするとアクが取れるよ」と清水さんが料理の知恵を教えてくれます。

 

煮汁を味見すると、黒はんぺんの旨味が出た濃いめの醤油味でとても美味しいです。

芋が煮えるまでの間に神社に移動して祭壇の準備をしました。生の芋、お神酒、水、米、粗塩をお供えします。

参加者が見守る中、祭壇の準備をします

「地域の宝」を残していく

イベントの中盤では、大橋益男さん・里枝さんご夫妻が黒石川や芋祭りの思い出を話し、三味線を弾きながら「我がまち音頭」を歌いました。

 

また、清水さん、三右衛門芋の生産者・小野田さん、神社総代の役員・上口さんは三右衛門芋、芋祭りについて話しました。

「里芋も土地に合うように変化してきた。『生きた文化遺産』として次の世代に引き継がれるといい」(清水さん)、「収穫作業は大変だが、『美味しい』という声が励みになる」(小野田さん)、「伝統を途絶えさせることなく、神事を続けていきたい」(上口さん)との言葉が印象的でした。

「我がまち音頭」を披露する大橋さんご夫妻

三右衛門新田には飢饉の時も里芋だけは生き残り、皆を助けてくれたという言い伝えが残っています。その大切な里芋に感謝するのが芋祭りです。三右衛門芋は硬くなく、柔らかな食感が特徴。今は2軒の生産農家が守り続けています。その種は貴重なもので、数がとても少なく、他の農家に分けて増やしていくことができないというのが現状です。

 煮た芋にかつおぶしをたっぷりかけて準備完了

芋が煮えたら切って串に差し、かつおぶしをかけます。完成した芋煮を神社の祭壇にお供えし、皆でお参りをして、すがすがしい気持ちになりました。

 

お待ちかねのランチタイム。芋煮、おにぎりに卵焼き、大根の葉、さやいんげんの炒め物が並びました。「この炒め物はどうやって味付けしたの?」「優しい味で、お酒を飲んだ翌日に食べたい!」と会話しながらのにぎやかな食事になりました。

生の芋、お神酒、水、米、粗塩、煮た芋を祭壇にお供え

味が染みた芋煮

このイベントは、「地域の伝統文化を大切にしたい」と考える三右衛門新田中老会と焼津の在来作物を研究し三右衛門芋の魅力を伝える清水さんの思いが一致し、共同で主催しました。中老会会長の北畠正彦さんは「参加者が集まるか不安だったが、食文化に興味がある人を中心に来てくれて良かった」と話しました。

参加者からは「地域のつながりは大事。コロナで価値観が変わり文化の継承が難しくなっているが、どうやったらできるか考えたい」との声がありました。イベント中ずっと活躍していた小学生は「料理を作ったりお皿を洗ったりして楽しかった。里芋が美味しかった!」と話してくれました。

 

地域で集まり、伝統文化を知ることができる場はどんどん少なくなっています。

今回のイベントで三右衛門芋の生産者、また料理や歌、神事で伝えていこうとする住民の思いを知り、焼津の食や農業、お祭りに興味がわきました。焼津の伝統文化を次世代につないでいく機会を大事にしたいですね。

イベントを主催した北畠さん(左)と清水さん(右)

まちかどリポーター

yuko

藤枝市出身。静岡市に引っ越した後、東京で大学、社会人生活を送り、再び静岡市に戻る。焼津は子供の頃を思い出す懐かしい街のため、変化にも目を向けて取材を楽しみたい。

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ページ更新日:2024年1月16日