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加工品で焼津の魚の美味しさ届ける~マルイ水産の「オレンジ風味しめさば」

ある取材の帰り、バスに乗っていると「手造りオレンジ風味しめさば」の看板を見かけました。しめさばとオレンジの組み合わせは意外ですよね!「どんな商品だろう?」と気になり、有限会社マルイ水産の鈴木博丈社長に話を聞いてみました。

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3段階で味わって楽しめる

取材当日、焼津市役所からさらに焼津港の方に歩くと、オレンジ風味しめさばとプリントされたのぼり旗とトラックを見つけました。

まずは、会社に併設された作業場を見学させていただきました。
水産会社の作業場を見るのは初めてで、テンションが上がります。
作業場では、職人さんがさば糀用にサバを手際良く三枚におろしています。
仕込み中のオレンジ風味しめさばの上には、オレンジのスライスがいっぱい。
当日揚がったばかりのサバは、新鮮で迫力がありました。このサバが、しめさばなどに加工されるのですね。

 
手作業でサバの脂の乗りやサイズを確認しながら三枚におろす

調味液とオレンジのスライスで漬け込まれたオレンジ風味しめさば(提供:マルイ水産)
 
取材当日に揚がった新鮮なサバ。迫力があります!

マルイ水産では、小川港や焼津港で水揚げされた鮮魚をスーパーや量販店に納品する仕事、レストラン向けに、鮮魚を買い付けて冷凍保管し、商品として加工する仕事の二つを行っています。加工品の中でもしめさばはお土産として直接買いに来る人が多い商品です。

オレンジ風味しめさばを考案したのは、創業者であるお父様。どうしてオレンジを使うことを思いついたのでしょうか?

しめさば特有の酢の強い酸味を消したいと考え、「みかん、柚子など何十種類と試した結果、オレンジがしっくり来た」とのこと。みかんでは糖分が強く、魚の甘みが消えてしまうそうです。最近は昆布締め、柚子など様々なしめさばが販売されていますが、約20年前に着目したオレンジ風味はマルイ水産だけの味です。

 
他県からのリピーターもいる人気商品「オレンジ風味しめさば」

オレンジ風味しめさばは口コミで広がり、リピーターもいます。
最初は何もつけずそのまま、次に醤油をつけ、最後にオレンジを絞るのがおすすめの食べ方。3段階で違う味が楽しめます。「一口食べると二口目が欲しくなるしめさばに出来上がっている」と自信を見せます。

家に帰ってから、さっそく私もいただきました。
脂が乗っているのに、さっぱりして美味しい!醤油をつけず、オレンジだけでいただくのも爽やかな味です。「一口食べると二口目が欲しくなる」という鈴木さんの言葉は本当でした。

 
 しめさばの断面を見ると、サバ本来のピンク色が残っています(提供:マルイ水産)

海が近い地の利が強み

マルイ水産の創業は平成17年。鮮魚、加工品製造の会社で働いていたお父様が独立して会社を立ち上げました。鈴木さんは大学卒業後、千葉県で食品メーカーの営業として働き、お父様と一緒に仕事をするため焼津に戻ってきました。

かつおぶしや練り製品を作っていたおじいさまの仕事場を子どもの頃から見に行ったり、手伝ったりしていたこともあり、水産業の仕事は自然に受け入れられたそうです。

食品メーカー時代は同僚や取引先から知識を学んでいたのに対し、今の仕事は、毎朝のセリで別会社の方と顔を合わせ、情報交換をするのが「他とは違う面白い仕事」だと感じています。また、海外の食品を売っていた以前の仕事に比べ、「最初から自分で作っているので商品への思い入れが違う」そうです。

マルイ水産では、当初は鮮魚と加工の割合が9対1でしたが、徐々に加工が増え、コロナ前には3対7に逆転していました。ところがコロナで外食向けの仕事が激減し、魚の切り身などで新たな販路を開拓する必要が出てきました。そのため、ぶり大根やさばの味噌煮のボイルパックのアイデアも生まれたそう。コロナ禍で始めたネット販売は3年目。商品の種類を増やしてきました。

 
加工品の種類が広がってきた

加工品を作る上で大事にしているのは、創業当初から扱ってきた鮮魚の知識です。
「脂の乗りが一番いい時期に調理すれば、お客様にも喜ばれるのでは」という発想をもとに、自分達で選んだ魚を加工することにこだわっています。焼津で水揚げした新鮮な魚の美味しさをまず地元の人に知ってもらい、全国にも発信したいと考えているそうです。

しめさばも「どうやったらサバを美味しく食べられるか」考え、塩で締めて酢に漬ける昔ながらの製法で作ります。調味液を芯まで浸透させない「浅漬け」にして冷凍することで、生の部分を残し「お刺身感覚」で味わえるように仕上げています。

1、2月に1年間分の寒サバを買い付け、冷凍保管しながら製造、出荷まで行います。
鈴木さんは、「他の産地のサバを使わなくても、焼津で水揚げされた状態を見て買い付けることができるのが強み」と話します。

マルイ水産のホームページのブログには、しめさばの知識がたくさん書かれています。
その印象通り、勉強熱心な鈴木さん。サバの脂の質、量によって塩の量や調味液に漬ける時間を調整しているそうです。「オレンジ風味しめさばは、より良いものを作りたいと今でも試行錯誤している。商品の質が上がり、ブレない味ができるとうれしい」と笑います。

 
オレンジ風味しめさばを手にする鈴木社長

 
取材当日は小川港で揚がったアジの開きの天日干しをしていました

海が近い静岡県に住んでいると魚を食べることは比較的身近ですが、今回の取材を通じて改めてそれは恵まれたことだと思いました。また鮮魚、加工品には「魚を美味しく食べてほしい」という作った人の思いや知恵が詰まっているのだと実感しました。焼津の新鮮な魚を気軽に食事に取り入れたいですね。

有限会社マルイ水産

会社に直売所を併設、ネット通販も行っています。


 

まちかどリポーター

yuko

藤枝市出身。静岡市に引っ越した後、東京で大学、社会人生活を送り、再び静岡市に戻る。焼津は子供の頃を思い出す懐かしい街のため、変化にも目を向けて取材を楽しみたい。

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ページ更新日:2024年3月23日