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小泉八雲は焼津のどこに惹かれたのか?焼津小泉八雲記念館で知ろう
焼津にゆかりのある作家、小泉八雲の作品を読んだことがありますか?明治の文豪というと難しそうなイメージがありますよね。焼津駅南口にある八雲の碑には八雲の作品「焼津にて」の一節が刻まれています。皆さんも気付かないうちに目にしているかもしれません。
画焼津駅前足湯の隣にある八雲の碑
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焼津の海、人柄を気に入って
焼津小泉八雲記念館学芸員の土手香澄さんに八雲の魅力と記念館の見どころを教えていただきました。
学芸員の土手香澄さん
「耳なし芳一」の切り絵と八雲のステンドグラスが印象的
展示室に入ってすぐの所に初版本が展示されています。初版本の装丁は実物を見る機会が少なく貴重なものです。記念館奥の閲覧コーナーでは、八雲の著作を読むことができます。「焼津にて」(『霊の日本』所収)の内容を見てみましょう。まず焼津の風景、漁船、お盆などの様子が描かれます。八雲は夜には瞑想しながら波の音を聞き、精神世界を深めていました。海は畏怖する対象であり、内面に深く関わっていたのですね。
直筆草稿「ろくろ首」と『怪談』の美しい初版本表紙
梅をモチーフにした表紙の『霊の日本』初版本と「焼津にて」の冒頭
小泉八雲は1897(明治30)年の8月に初めて訪れた焼津の海を大いに気に入り、以後亡くなるまで6回もの夏を焼津で過ごしています。(焼津小泉八雲記念館ホームページより)
八雲は焼津の荒く深い海が気に入って、一日に何度も海水浴をしていました。土手さんによると、「近代化が進む東京で執筆活動や大学講師の仕事を行いストレスを感じていた八雲にとって焼津は息をつける場所だった」とのこと。浴衣や草履といった日本人と同じ服装で歩き、夏の休暇を楽しみました。
焼津が出てくる作品の中で私が特に好きなのは、八雲の宿主でもあった魚屋の山口乙吉についての描写です。二人のやりとりは読んでいて楽しい気持ちになります。八雲が焼津を気に入った理由の一つに乙吉の飾らない人柄もあるようです。
以下『日本雑記』所収「乙吉のだるま」(訳・村松眞一静岡大学名誉教授)の一節
「それ、食べられるかね」と私は聞いた。
「へぃ!」と乙吉は答えた。「これを先生さまの御食事につけましょう。」
[どんな質問に対しても―否定の答えを要する質問でさえ―乙吉の返事は、まず感嘆詞「へぃ!」で始まる。それが、いかにも共感と善意の調子で言われるので、聞く方にこの世のあらゆる苦を、忘れさせてくれるほどである。]
八雲ゆかりの地を撮影している写真家の高嶋敏展さんは「八雲が焼津を愛したのは、好きな人がいた場所というのが大きい。乙吉の純朴な人柄に惹かれたのだろう」と話しました。
夫、父親としての姿
東京にいる妻・セツさんに宛てた手紙も見どころの一つです。八雲は焼津での過ごし方を毎日手紙に書いていました。小説の草稿は母国語の英語で書いていたのに対し、手紙はたどたどしい日本語で書いていたことからも家族への愛情が感じられます。息子の水泳や勉強についての記述からはくつろいでいる様子が伝わってきますね。
妻・セツに宛てた手紙。冒頭には「やいづ」の文字がひらがなで書かれている
「没後120年で改めて八雲の作品や足跡に思いをはせる年にしたい」と話す土手さん。
記念館は図書館や文化センターに隣接しており、老若男女気軽に来てほしいとのことです。記念館にある散策マップを見ながら、ゆかりの地を巡るのも楽しそうです。私もさっそく浜通りにある八雲滞在の家跡の碑を見てきました。ここで夏の休暇を過ごしていたのかと想像が膨らみます。
焼津八雲散策マップ
旧光寺近くの民家の前にある八雲滞在の家跡の碑
歴史ある家屋が立ち並ぶ浜通り。「八雲通り」とも呼ばれる
土手さんは焼津小泉八雲記念館の学芸員になって三年目。「雪女」「耳なし芳一」などの八雲が日本に昔からある話を耳で聴いて詩的な表現を付け加え、再話文学として語り直した物語は、日本の人々にも広く親しまれており、日本の文化にも深く影響を与えたと感じているそうです。
「焼津にて」には焼津の空気感、人柄の温かさが描かれます。それは現代に生きる私たちが見ている焼津と通じるものがあります。八雲は地元の人から「先生様」と慕われていました。記念館の展示を見て八雲が焼津を愛し、くつろいで過ごした様子が伝わってきて、親しみやすく身近な存在へと印象が変わりました。
25年秋から放送される連続テレビ小説「ばけばけ」では八雲の妻・セツさんが主人公のモデルとなることが発表されています。この機会に八雲が焼津で過ごした日々に触れてみるのはいかがでしょうか?
まちかどリポーター
yuko
藤枝市出身。静岡市に引っ越した後、東京で大学、社会人生活を送り、再び静岡市に戻る。焼津は子供の頃を思い出す懐かしい街のため、変化にも目を向けて取材を楽しみたい。
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ページ更新日:2024年8月9日